収益物件の購入を検討している方の中には、マスターリースをセットで購入することを考えたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
マスターリースというのは、オーナー様が所有する物件を、転貸することを前提に不動産会社が一括で借り上げる契約形態のことです。不動産会社が賃貸経営の煩わしい業務をおこなってくれるだけでなく、契約内容によっては空室時の家賃保証がついている場合もあり、安定した賃貸経営を期待してマスターリース契約を締結するオーナー様も少なくありません。
しかし、週刊【全国賃貸住宅新聞】2023年9月25日号の一面に、収益物件とマスターリースをセットにする販売手法により、不動産会社が損害賠償の支払いを命じる判決が下されたという記事が掲載されました。
内容としては、入居者がサブリース会社に対して支払う家賃より、サブリース会社がオーナーであるAさんに支払う家賃の方が高い状態、いわゆる「逆ざや」状態だったというものです。さらにAさんが物件を購入する際、すでにこの「逆ざや」状態であったにもかかわらず、不動産会社からAさんに説明がなされなかったという点が、不法行為としてみなされたというわけです。
少しわかりづらいので、今回の事例を解説しながら、何が問題なのかをお話しします。
今回不法行為としてみなされたのは、不動産会社が物件を販売する際に「逆ざや」状態であることをAさんに説明しなかったという点です。
Aさんが物件を購入する前、対象の物件は家賃が94,000円で、マスターリース賃料(不動産会社からAさんに支払う家賃)は85,000円であると説明がされていたとのこと。これは契約書にも明記があり、Aさんは「家賃94,000円分の価値がある物件」という認識のうえで物件を購入し、サブリース会社とマスターリース契約も締結しました。
しかし実際には、入居者からは家賃42,000円と管理費8,000円、合計50,000円しか徴収していませんでした。つまりサブリース会社が、Aさんの知らないところで毎月30,000円以上の赤字を出していたということです。
どうして不動産会社やサブリース会社が「逆ざや」状態を伏せて物件を販売したかというと、家賃が高い物件の方が高く売れるからです。
家賃50,000円の物件よりも、94,000円の物件の方が高く購入してもらえます。家賃を水増ししたぶん、売却金額を吊り上げることができ、サブリース会社が毎月30,000円以上を負担したとしても大きな利益を得られるという仕組みです。
今回の判決では、サブリース会社が毎月赤字を出し続けていることは、社会通念上明らかに異常な事態だと判断されました。そしてこの異常事態を説明せずにAさんに対して物件を売却したということで、密接な協力態勢にあった仲介会社・サブリース会社(今回の場合は2社)とその代表取締役に対して、説明義務違反が認められる結果となりました。
不動産仲介会社とサブリース会社の不法行為を認める判決はあまり例がありません。収益物件とマスターリースをセットにする販売する手法は、決して珍しいものではありませんが、今回の判決は今後の収益物件やマスターリースの販売手法の流れを変える、大きな出来事になったと言えるでしょう。
サブリースは安定した賃貸経営をおこないたいオーナー様にとって、非常に魅力的なサービスであることは言うまでもありません。しかし一方で、物件を購入してもらうために家賃や入居率を水増しして、販売している悪質な不動産会社がいるというのも事実です。
賃貸経営で失敗しないためには、オーナー様自身でも不動産の収益性や市場動向を判断できる目を養っていただく必要がありますが、それ以上に、信頼できる不動産会社や賃貸管理会社を味方につけることも重要です。
賃貸経営のコンサルティングをおこなっているリオ・トラストでは、収益不動産の購入から管理、売却まで、オーナー様の資産運用を全面的にサポートしておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。