賃貸物件にはサブリース契約による不動産投資トラブルや家賃、入居者対応といった様々な問題が起こりえます。
この辺りは不動産賃貸管理業界でも日常業務としてかなり洗練されてきましたが、建物の修繕に関しては外注している管理会社も多く、建物の維持・保全に関わるサービス業務に対してはまだまだ改善の余地があります。
そこで2023年に公益財団法人日本賃貸住宅管理協会は「賃貸住宅メンテナンス主任者認定制度」を新たに設立しました。
試験方式で取得できる資格であり、建物設備の維持・保全に関わる基本的な知識を体系的に学んでもらい、幅広く建物設備の維持・保全に関わるサービス水準を上げようというものです。
2023年11月6日から受験申し込みが開始され、同月14に時点で初年度想定受験者数1000人という関係者の予想をはるかに超えて、3100人もの申込みがありました。
このことから、業界内でも注目の高さが分かります。
弊社スタッフも受験し、「賃貸住宅メンテナンス主任者」の資格を取得しました。
実際の事例も交えて「賃貸住宅メンテナンス主任者」の資格を見ていきます。
試験内容は賃貸住宅の構造、設備の知識、修繕対応から学ぶ設備の知識、消防設備の知識、外部改修工事の知識、巡回点検業務のチェックポイント、法令点検とコンプライアンス、原状回復の基礎知識から100問出題され、70点以上で合格となります。
内容としては、賃貸不動産経営管理士よりも実務に近い問題が多い印象でした。
この試験は、どなたでも受験することができ、受験料お支払い後2週間程度でテキストが到着します。
IBT方式というインターネットを介して行われる試験の形式で、いつでも、どこでも好きな時に受験することができ、試験結果もその場ですぐに分かります。
管理会社にとってはこの試験を受けることで、オーナー様から賃貸住宅の建物・設備の維持保全に関する問い合わせを受けた際に初心判断が出来る基本的な知識と技能を習得でき、建物の維持保全における提案力も培えます。
今後、管理物件を受託する上で必要な資格になっていくでしょう。
どういった場面で資格の知識が生きてくるのか、弊社で実際にあった事例をご紹介します。
エアコンの設置率が低い北海道の物件の管理会社であった、原状回復の費用請求についてのケースです。
入居者の退去立会の際に、賃貸人が、入居者から事前に承諾を得ているという内容でエアコンを追加で取付けた際につけたビス穴の費用の請求がありました。
国土交通省ガイドラインでは、「エアコンについてはテレビ同様一般的な生活をしていくうえで必需品になっており、その設置によって生じたビス穴等は通常の損耗と考えられる。」となっております。
エアコンの取り付けという起因がないビス止めの補修費は入居者の負担ですが、今回のケースではエアコンの取り付けの際に発生したビス穴の補修費は賃貸人の負担となります。
ここでは賃借人を守るという立場で賃貸住宅メンテナンス主任者の知識が約に立ちました。
管理に係る資格では前述した賃貸不動産経営管理士がありますが「賃貸住宅メンテナンス主任者」はこの資格を補助する位置づけとなっていくでしょう。
実物の不動産投資では建物や設備の状態によって収益が左右されます。かかる費用以上の利益を得るためにも、設備の維持管理の知識が役に立つこともあるでしょう。
管理会社としましては、そういったオーナー様への経営支援の幅も広げていくことができます。
管理会社以外でも、関連するメンテナンス業者等の取得も多い資格です。
管理会社から提案される修理や改修工事が必要なものどうかなど知識を深めることが出来ますので、管理を委託しているオーナー様も挑戦してみるのも良いかもしれません。
弊社でもより良いサービスを提供できるよう邁進していきます。