令和6年賃貸不動産経営管理士資格試験の合格発表、R6年は24.1%と難易度が上昇傾向

令和6年11月17日に賃貸不動産経営管理士資格試験が実施され令和6年12月26日に合格発表がありました。

賃貸不動産経営管理士は宅地建物取引士と違い独占業務がないため、意味ない資格と言われることもありますが管理戸数が200戸以上の不動産会社は営業所または事務所ごとに1名以上の業務管理者を設置することが義務付けられており、賃貸不動産管理を専門とする唯一の国家資格でもあります。

1:賃貸不動産経営管理士の受験者数

令和6年の受験者申込者数は3万194人となり、合格点は35点、合格率は24.1%となっております。

令和3年度から国家資格となりましたが、宅地建物取引士の様に受験者数は増えてはないものの、令和3年度以降は毎年3万人前後が受験し前年の合格率は28.2%から大きく下がっています。

このことから難易度が上がっていることが窺えます。


注)令和元年までは40問の出題。令和2年以降は50問の出題

2:実際の試験内容

賃貸不動産経営管理士は賃貸物件の運営や管理に関する専門的な知識とスキルを持つ資格を有する人を指すため、試験内容は、不動産に関する法律、賃貸物件の管理技術、経営戦略など、幅広い分野にわたります。

今回は令和6年度の問題の中から実務上、トラブルになりやすい「現状回復をめぐるガイドライン」の問題を1問ご紹介します。
令和6年試験問10の問題です。

(問題)
原状回復ガイドラインに関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
① 原状回復ガイドラインによれば、原状回復とは「賃借人の居住、使用により発生した建物の損耗・毀損を復旧すること」と定義されている
② 原状回復ガイドラインによれば、賃借人が通常の清掃を実施していない場合、住戸全体の清掃費用相当分の全額が賃借人の負担となることがある。
③ 原状回復ガイドラインによれば、賃借人の過失により畳表の張替えが必要となった場合、6年で残存価値1円になるような直線を想定し、負担割合を算定する。
④ 原状回復ガイドラインによれば、戸建賃貸住宅の庭に生い茂った雑草の原状回復費用は賃借人の負担にはならない。

(解説)
こちらの設問は②の問題が適切となります。

通常の清掃(ゴミの撤去、掃き掃除、拭き掃除、水廻、換気扇、レンジ周りの油汚れの除去等)を賃借人が実施していない場合は、部位もしくは住戸全体のハウスクリーニング費用を全額賃借人負担とすることができます。

(補足)
実際の退去時の原状回復費用の請求で上記の水廻りの実費請求は多くみられます。特に浴室の鏡に付着した水垢除去の費用は賃借人に請求をしているケースが多くみられます。

こちらの設問で注目して欲しいものとして④が上げられます。
戸建て賃貸住宅の庭に生い茂った雑草の原状回復費用の問題ですが、草取りが適切に行われていない場合は賃借人の善管注意義務違反に該当すると判事されているため、賃借人へ請求することができます。

戸建ての賃貸の取り扱いは不動産会社によっては少ないこともあり情報が少なく、こういった内容を把握していないと不利益を生じる可能性もあります。

3:まとめ

賃貸不動産経営管理士試験は宅地建物取引士と勉強の範囲がすこしかぶる部分があり、宅建試験から1ヶ月後に実施されるため、賃貸不動産会社勤務の社員は同時に受ける人も多い資格です。

現状は宅建試験のついででも受かる可能性はある試験ですが、近年は難易度も上がっており賃貸経営管理士試験だけの受験でも合格が難しくなってくることでしょう。
宅地建物取引士に比べるとまだまだ認知度が低い試験ですが、賃貸経営管理の国家資格を持っているということは、オーナー様の大切な資産を預かる管理会社には必要な資格になっていくことが予想されます。