不動産市場の活性化 空き家の仲介手数料上限額の引き上げ

少子高齢化の時代を迎え、駅から遠い住宅街などで、高齢運転者による事故なども懸念される中で、自宅を所有する高齢者が老人ホームなどの高齢者住宅や子供宅などに転居することにより、空き家が増加しています。

※「2023年住宅土地統計調査」の速報集計によると、前回約349万戸であった「居住目的のない空き家」は、2023年では385万戸と、5年間で約36万戸増加しており、今後も増える続ける空き家・空き地への対策が急がれている

こういった背景もあり、2024年7月1日より、国土交通省は不動産市場で流通しづらい空き家の流通を促すため、宅地建物取引業者の報酬規定を改正し、空き家の仲介手数料の上限を引き上げました。

従来までと売買・賃貸取引で変わった部分をご紹介いたします。

1:従来の空き家取引

不動産業者にとって地方の空き家取引は調査等の業務負担が大きくて収益性が低い、
地方や田舎のため買い手が見つからない部分も強くあり、積極的に取込する動機づけがなかったことも一因となっていました。

今回の引き上げにより、不動産業者に積極的に介入してもらおうという狙いです。

2:売買取引の場合

売買と賃貸で空き家の定義が変わります

売買での空き家の定義は、「売買に係る代金の額又は交換に係る宅地又は建物の価額が800万円以下の金額の宅地又は建物(当該宅地又は建物の使用の状態を問わない)」です。
※ただし、媒介契約の締結に際して予め特例に定める上限の範囲内で、報酬額について依頼者に対し説明し合意する必要があります。

改正点のポイントは下記の二つです。
・2018年1月から物件売買価格が400万円以下の場合、売主から最大18万円(税抜)受け取ることができることに変更

・2024年7月から売主からの報酬上限が19.8万円から33万円へと引き上げられ、さらに買主からも最大33万円の報酬を受け取れるように変更

上記の改正により、例えば0円の空き家を仲介した仲介会社も、売主と買主の両方からの手数料で合計66万円もの仲介手数料を正規に受け取ることが可能となります。

3:賃貸取引の場合

賃貸取引の空き家の定義は下記の二つです。

・「現に長期間にわたって居住・事業等の用途に供されていない」少なくとも1年を超えるような期間にわたり居住者が不在となっている戸建の空き家、分譲マンションの空き室

・「将来にわたり居住・事業等の用途に供される見込みがない」相続等により利用されなくなった直後の戸建の空き家や分譲マンションの空き室であって、今後も所有者等による利用が見込まれないもの

いずれも、人の出入りや、電気・ガス・水道の使用状況、物件の管理状況、所有者の利用実績が判断基準になります。
※ 媒介契約に際し予め特例に定める上限の範囲内で、報酬額について依頼者に対し説明し合意する必要があります。

※居住用建物の場合、依頼者の一方から、1ヶ月分の借賃に0.55を乗じた金額以内(媒介の依頼を受けるに当たって依頼者の承諾を得ている場合を除く)

私自身、「空き家」の先入観で、「戸建てのみ」と考えていましたが、「分譲マンションの空室」も扱いが可能との事です。

4:まとめ

従来でも、売主と別途、※不動産コンサルティング契約を締結することで、報酬の獲得が可能でしたがやはり、売主的には正規の料金では無い印象も強くありました。今回の改正により正規の方法で、報酬額の上乗せが可能となりました。

※ コンサルティング報酬については宅地建物取引業法における報酬規制の対象とならない
(=媒介報酬とは別に報酬の受領が可能)とするルールが明確に記載されいます

気になった点として、現に入居者の募集を行っている賃貸住宅の空き室については、事業用として「長期の空家等」には該当しないことに留意する必要があったり、集合住宅では全ての部屋が空室にならない限り、空き家に指定されないなど、売買取引と比較すると賃貸取引では、定義が難解に感じます。

ですので、賃貸住宅では空き家にあてはまるかどうか、売買よりも注意が必要です。

「相続不動産の名義変更の義務化」「所有者への課税強化」といった縛りだけでなく、今回のように「媒介報酬規制の見直し」により、不動産市場の活性化・空き家の減少による地域貢献も期待されますので、引き続き注視していきたいと思います。