海外居住者の売買契約

コロナが明け、海外赴任や海外からの投資が増加しそれに伴い「海外居住者の扱い」に関する問い合わせが増えております。

(問い合わせ例)

 

前回は賃貸での海外源泉についてのご紹介でしたが、今回は売買について触れていきます。

1:海外源泉について【非居住者が不動産を売却した場合】

海外居住者より不動産を購入する際、支払金額の10.21%相当額を源泉徴収して税務署に支払う義務があります。

海外居住者へ支払われる金額は支払金額の89.79%相当額で残りの源泉徴収した10.21%については、不動産の購入者が対価の支払いをした翌月10日までに税務署に納付することになります。

海外居住者は、確定申告することで源泉徴収された金額が精算されることになります。
ただし、不動産の売買金額が1億円以下&購入した個人が自己又はその親族の居住の用に供するためのものである場合には、源泉徴収の必要はありません。

「例:2,400万円の売買契約で手付金100万円、残代金2,300万円の場合」

※ちなみに源泉徴収時、1円未満は切り捨てとなります。

源泉徴収の手続きはそれぞれ下記のとおりです。
◆買主の源泉徴収手続き
源泉所得税の納付書(非居住者・外国法人の所得についての所得税徴収高計算書)に必要事項を記載して税務署に源泉徴収税額を納付します。

源泉所得税の納付書または支払調書は売主の確定申告時に必要となりますので書類のコピーを売主に交付してください。

◆売主の源泉徴収手続き
確定申告の際に源泉徴収された金額を証する書類の提出が求められますので、買主から受け取った納付書または支払調書のコピーを保管ください。

引渡し翌年の2月16日から3月15日までの間に確定申告書を税務署に提出します。
源泉徴収税額>税額となる場合にはその差額につき還付が受けられ、
源泉徴収税額<税額となる場合にはその差額を納付することになります。

2:非居住者が不動産売却時に必要な書類について

基本的に不動産売却時には所有者の住民票が必要です。では非居住者の場合にはどのような書類が必要になるのでしょうか?

必要書類
① 住民票の除票
除票は主にかつて住んでいた(住民登録をしていた)ことの証明やそこに住民登録をする前後の住所地の証明、あるいは、その方が死亡していることを証明する場合に用いられます。

② 在留証明書
在留証明書は、一般的に現在外国にお住まいの方(日本に住民登録の無い方)が日本国内の提出先機関から外国における住所の提出が求められている場合に発給される一種の行政証明です。

③ サイン証明書
サイン証明書とは、特定の機関が、署名が本人のものであることを証明する書類です。
印鑑証明書の代わりとして日本での不動産登記や銀行ローン、自動車の名義変更などの手続きに利用されます。

④ 代理権限委任状
本人が代理人に一定の権限を与え、法律行為などを行ってもらうことを証明する書類です。

3:非居住者(売主)からの相談

当社に、非居住者様より以下の相談がありました。

【概要】
・現在所有している区分マンションをオーナーチェンジで売却したい。
・息子(海外在住)が所有している。
・買取業者にて残債(2,350万円)以上の買い付け(2,400万円)があった。
→源泉徴収の関係から、抵当権が抹消できない。

【詳細】

 

売り主が「引渡し時」に手にする金額は、(a:897,900円+c:20,651,700円)=21,549,600円となり、残債が2,350万円のため抵当権抹消には195.04万円が不足します。

【課題】
一般的には「差額分を自己資金で賄うなどの対処」をしますので、195.04万円を預貯金などで一旦工面します。
(確定申告時に源泉徴収税額>税額となる場合にはその差額につき還付が受けられます。)

今回、自己資金の工面が海外居住の為難しく、海外源泉の回避スキームがないか相談したいとの事でした。

ここまでお読みいただきありがとうございます。
文章が長くなってしまいましたので、こちらの続き【課題解決提案】は次回の連載でお届けいたします。どうぞお楽しみに!