賃貸物件では、ご入居者様が退去された後の室内チェックで、初めて明らかになる問題に遭遇することがあります。
今回は、築40年を超える物件の原状回復作業で直面した、あるクローゼットの不具合と、そこから得られた「建物と長く付き合うための知恵」について、ご説明いたします。
先日、約3年間、特に大きな問題もなくお住まいいただいたお部屋の退去立ち会いがありました。
室内の確認を進める中で、クローゼットの引き戸がきちんと閉まらないという事実に気が付きました。
扉の動き自体はスムーズなのですが、本来あるべき定位置で「カチッ」と収まらず、スーッと滑って元の位置に少し戻ってきてしまうのです。
これでは、扉としての役割を完全に果たしているとは言えません。
一見すると、どこも壊れているようには見えないのが、かえって問題を複雑に感じさせました。
このクローゼットは数年前にリノベーションで設置されたもので、見た目はまだ新しく、部品が劣化した様子は見受けられません。
では、なぜ閉まらなくなってしまったのか。
原因として推測されたのは、築年数が経過した建物全体の、ごく僅かな「傾き」や「歪み」でした。
まっすぐに造られた建具が、建物の長い歴史の中で生じた変化に馴染めず、“ズレ”が生じてしまったのです。
専門の建具業者に相談したところ、「再発防止のためには枠ごと作り直すのが最善です。費用は35万円になります」という提案を受けました。
「建物自体が動いている以上、枠を新しくしても本当に再発しないのだろうか?」私たちは、その提案に少し疑問を感じました。
高額な費用をかけて新品に交換しても、数年後にまた同じ問題が起きる可能性は否定できません。
そこで、日頃から柔軟な対応をしてくださるカーテン業者様に別の視点から相談してみました。
すると、「建物の現状に合わせて建具を“馴染ませる”方向で修理しましょう」という提案をいただきました。
具体的には、扉の軽量化やレールを再設置、枠の微調整といった“設備側ではなく建物側に合わせる視点”からの作業を行いました。
結果、費用は約10万円に抑えられ、見た目も使い勝手も新品同様の仕上がりとなりました。
今回の経験から、私たちは設備の不具合に対し、すぐに「新品に交換」と判断するのではなく、その建物の特性を深く理解し、現状に合わせて「整える」という視点を持つことの重要性を再認識しました。
特に築年数の経った物件では、完璧な新品を設置するよりも、建物が持つクセに寄り添い、バランスを取るような修理の方が、長く快適に建物と付き合っていくうえでは重要な視点だと感じています。
同じようなお困りごとがございましたら、どうぞお気軽にご相談ください。
現場に合わせた、無理のないご提案をさせていただきます。


