苦情・トラブル対応時に問われる責任の所在を整理しよう
賃貸経営では、入居者からのクレームやトラブルは避けられません。
その際「管理会社に任せているから自分には関係ない」と考えていませんか?
実は、管理会社とオーナーには明確な責任分担があり、内容によってはオーナーが直接責任を負うことも少なくありません。
ここでは、トラブル対応時の法的立場と責任、オーナーが知っておくべきリスク、管理会社との契約で注意すべき点を解説します。
管理会社の業務は、基本的に「オーナーの代理」として行われます。
そのため入居者対応や修繕手配を管理会社が実施しても、最終的な責任はオーナーに帰属することが多いのです。
例えば、入居者から以下のような苦情が寄せられた場合:
• エアコンが壊れて使えない
• 隣の住人が夜間に騒音を出している
• 共用部の階段で転倒しケガをした
これらはすべて「物件所有者=オーナーの責任」が問われる可能性があります。
管理会社はあくまで「受託者」であり、管理会社の対応が不十分でも「知らなかった」では済まされないことがあるのです。

■ 設備の不具合
給湯器やエアコンが故障し入居者が不便を被れば、「修繕義務を怠った」として損害賠償につながります。
民法第606条では貸主は必要な修繕を行う義務があると定められており、管理会社の報告不足があっても責任を免れません。
■ 騒音・近隣トラブル
入居者同士のトラブルは管理会社が初動対応しますが、繰り返しの苦情や対応遅れがあればオーナーが訴えられるリスクがあります。
特に「放置していた」と判断されると、貸主責任の一環で賠償を求められることもあります。
■ 共用部での事故
廊下や階段での転倒事故が、床材の不備や手すり不足に起因すれば、オーナーは安全配慮義務違反を問われます。
火災保険に個人賠償特約を付けるだけでなく、日常点検と報告体制の整備が不可欠です。

トラブルの多くは「管理会社に任せていたつもりが、契約上は対象外だった」というものです。
■ 管理委託契約の確認
契約書には以下のような業務区分が明記されています
• 入居者募集
• 賃料集金
• クレーム対応
• 修繕・点検
• 建物管理(清掃・点検・法定検査など)
特に注意すべきは「一次対応のみで、継続対応や弁護士対応は含まれない」といった範囲の限界です。管理会社からの報告がなければ、オーナーが知らないままリスクを負う場合もあります。
■ 実務と契約を一致させる方法
1.契約書を定期的に見直す
法改正や設備の老朽化に応じて、契約内容の見直しを行うことが大切です。
2.報告体制・対応フローを明文化する
トラブル発生時の対応ステップや、オーナーへの報告ルールを明確にしましょう。
3.重要な対応は書面(またはメール)で残す
口頭だけで済ませず、記録を残すことで責任の所在が明確になります。

賃貸経営において「管理会社に任せているから大丈夫」という考えはリスクになります。
管理委託はあくまで業務の一部代行であり、最終的な責任はオーナーにあります。
• 設備不良や事故への備え
• 入居者トラブルへの初期対応と継続対応
• 契約内容の定期的な確認とアップデート
これらを徹底することでトラブルを防ぎ、安定した賃貸経営につながります。
信頼できる管理会社と連携しつつ、「オーナーとしてどこに責任があるのか」を理解することが重要です。


