令和8年度税制改正 不動産業における影響

1. 改正の概要:相続直前の不動産購入による節税の厳格化

2026年度税制改正(令和9年1月1日以降適用)により、相続直前の賃貸不動産購入による相続税対策(節税)が厳しくなる見込みです。
「亡くなる5年以内」に購入した賃貸物件は、評価額が大幅に下がる「路線価評価」ではなく、購入価格の約8割(購入価格から2割引き)で評価されるようになります。

これにより、これまでの大幅な節税効果(市場価格の3〜4割程度に圧縮)は期待できなくなります。
購入から5年以上保有することで節税効果が発揮される「5年ルール」が不動産にも適用される形となり、相続税対策目的の短期売買は難しくなります。

2. 改正の具体的なポイントと対象資産

対象①:賃貸用不動産(アパート、賃貸ビルなど)
変更内容: 亡くなる5年以内に購入した賃貸不動産は、「路線価(土地)や固定資産税評価額(建物)」ではなく、「購入価格の8割程度(購入価格から2割引き)」で評価されます。
これまで1億円で購入した物件は、評価額が3000万円になることもありましたが、改正後は5年以内なら8000万円程度(1億円の8割)で評価されるイメージです。

対象②:不動産小口化商品(不特法や一定の信託受益権スキーム等)
変更内容: 取得時期を問わず「通常の取引価額相当」で評価する方向が明記されました。
※不動産の小口化商品については、購入価格の1〜2割の評価額になっていたケースもありましたが、今後はそのような評価減ができなくなる方向です。

適用開始と目的
適用開始: 令和9年1月1日以後の相続に適用(2027年1月1日以降)。
目的: 相続直前の不動産購入による相続税の「駆け込み節税」を封じるため。

3. 市場への影響と投資家の動向

この発表を受け、少しお年を召された相続事業承継を見据えた投資家さんから売却の相談も入ってくるようになりました。
直近ご自身が亡くなった場合に備え、直近の購入物件を転売し現金化したいというニーズが発生しています。

本来は将来的な評価減のために購入していたにもかかわらず、「直近5年内の購入物件の中でも売却可能であろう物件」や「残債との差額の大きな物件」を一旦現金化し、何かあった場合の資金に充てられるようにしようという方向性に変わったようです。
特にホテル物件などがその対象になっています。

また、小口化商品を販売しているファンドさんの一棟不動産取得の動きも鈍ってきそうな予感がします。

4. 今後の対策と注意点:長期保有・事業承継へのシフト

5年ルールを意識した対策の必要性
相続対策として不動産を活用するなら、5年以上前から保有し、時間を味方につける戦略が重要になります。
これは相続税の時効(原則5年)とは異なる、不動産の評価方法に関する改正です。

注意点と今後の方向性

例外: 5年以上前から所有している土地に新たに建物を建てた場合は、この5年ルールは適用されません。
詳細: 制度の大綱段階であり、具体的な適用範囲(事業用ビル、駐車場など)は今後の通達で詳細が詰まります。
タワマン節税の終焉: 貸付用不動産の評価見直しにより、直前にアパート・タワマンを購入して評価を落とすスキームは、ほぼ幕引きの方向です。
結論: 今後は、事業としての賃貸経営・長期保有を前提とした、「事業承継型の不動産相続対策」が中心になっていきます。