賃貸経営において、「更新料」や「原状回復」は収益確保とトラブル回避の要です。
しかし、契約条項の解釈を誤ると、思わぬ損失や裁判リスクを招くことがあります。
最近の判例や法改正により、従来の「慣習」だけでは通用しないケースが増えています。
オーナーとして押さえておくべき最新ポイントと対策を解説します。
「契約更新時には更新料を支払う」という取り決めは一般的ですが、近年その有効性が見直されています。
特に注意が必要なのが「法定更新(自動更新)」となったケースです。
例えば、東京地方裁判所(令和6年2月16日判決)では、更新拒絶通知がなく法定更新された事案で、「契約書に記載があっても、法定更新の場合には更新料支払い義務が発生しない」という厳しい判断が下されました。
「書いてあれば貰える」という時代ではなくなっているのです。
【オーナーの対策】
契約書を作成・更新する際は、「合意更新か法定更新か」を明確に区別し、「法定更新の場合でも更新料が発生する」旨を具体的に明記する必要があります。
また、更新拒絶をせずに放置して法定更新になると請求権を失うリスクが高まるため、更新・再契約の手続きフローを確実に管理することが重要です。
退去時の敷金精算もトラブルの定番です。
大前提として、民法や国交省ガイドラインでは「通常損耗や経年変化はオーナー負担」が原則です。
「特約があれば入居者に負担させられる」と思われがちですが、ここが落とし穴です。
最高裁などの判例では、たとえ負担区分表があっても、「入居者がその内容を明確に認識し、合意していない限り、通常損耗を負担させる特約は無効」とされる傾向にあります。
単に契約書に一行書いてあるだけでは不十分なのです。
【オーナーの対策】
原状回復義務を課す場合は、「どの損耗が通常の範囲か」「特約で何を負担させるのか」を契約書にはっきり記載し、契約時に十分説明すること。
そして精算時には、経過年数を考慮した適正な按分を行うことが不可欠です。
更新料や敷金・原状回復は、単なる事務手続きではなく、賃貸経営の「収益」と「リスク」そのものだからです。
最新の判例や実務の流れを無視していると、以下のような事態になりかねません。
・更新料を当てにしていたのに、「法定更新だから払わない」と拒否され、請求も認められない。
・敷金から修繕費を引いたところ、入居者から返還請求訴訟を起こされ、敗訴する。
・特約が「無効」とされ、本来もらえるはずのお金が入らず、修繕費が持ち出しになる。
逆に言えば、契約書や業務フローを精査しておけば、こうしたリスクを最小限に抑え、安定した収益確保が可能になります。
具体的にオーナー様ができる対策は以下の2点です。
①契約書の定期的な見直し
「昔の雛形」を使い回すのは危険です。
更新料条項や原状回復特約が、最新の判例・ガイドラインと整合しているか、専門家を交えてチェックしましょう。
特に「法定更新時の扱い」は要確認です。
②退去時の記録を徹底する
精算時に揉めないためには、「通常損耗」か「入居者の過失」かを客観的に証明する必要があります。
写真や修繕履歴などの記録をしっかり残しておきましょう。
更新料、敷金精算、原状回復義務これらは賃貸経営の安定を左右する重要テーマです。
最近の判例動向を見ると、オーナー側にもよりロジカルで慎重な運用が求められています。
特に「特約の内容・説明・合理性」は厳しく見られます。
「昔からこうしているから」という考えは一度捨てて、契約書や実務プロセスを最新の基準にアップデートしましょう。
それが無用なトラブルを防ぎ、長く安定した賃貸経営を続けるための近道です。
この機会に、ご自身の物件の契約書を一度見直してみてはいかがでしょうか。


