借地権付きの物件は、所有権と比べて、売買にあたって確認・調整しなければならないことが多くあります。
まず、土地賃貸借契約の内容を確認する必要があることはもちろん、地主の承諾が必要になります。また、金融機関によっては借地権物件への融資を取り扱っていなかったり、融資条件が厳しくなったりすることもあります。
一方で、借地権物件には「立地の良い物件を、所有権より比較的抑えた価格で購入できる」というメリットもあります。
今回お預かりした物件は、一部が借地権ではあるものの、大部分は所有権という少し特殊な物件でした。
売買契約、融資審査までは順調に進んでいましたが、最後に問題となったのが、地主との調整でした。 
今回の買主様は、2名の共有名義で購入する予定でした。
土地賃貸借契約書にも複数名を記載できる形式となっていたため、当初は共有名義でも手続きを進められるものと考えていました。
ところが、手続きを進める中で地主側から、「共有名義では承諾できない。単独名義でなければ契約書に捺印しない」という意向が示されました。
理由は、将来的に権利関係が複雑になることを避けたいというものでした。
契約書上には記載はなく、名義欄も複数名を記載できる形式となっていたため、事前に読み取ることが難しい条件でしたが、借地権の売買では地主の協力がなければ、現実的に手続きを前へ進めることが難しい場面があります。
契約書の記載だけを見れば交渉の余地はあったとしても、法的な争いまで発展させれば、時間も費用もかかります。
融資や契約解除などの期限があるなか、現実的な対応ではありません。「正しいか、間違っているか」だけでは解決できないのが、実際の取引の難しいところです。
そこで買主様には、共有名義から単独名義へ変更できないか打診しました。
同時に地主側にも、何とか共有名義のまま承諾いただけないか調整を続けました。
しかし、最終的には双方の条件を合わせることができず、契約解除の期日を迎え、売買契約は白紙となりました。
売主様、買主様ともに多くの時間をかけ、融資審査まで進めていた中での契約解除です。
仲介する私たちにとっても、非常に悔しい結果となりました。
その後、幸いにも別の買主様とのご縁があり、改めて売買契約を締結することができました。
今回の取引については、「契約書に何と書いてあるか」だけでなく、地主が実務上どのような条件や考え方で承諾しているのかまで、把握しておくことが必要でした。
不動産取引には、契約書があり、法律があり、決められた手順があります。
しかし、実際にその手続きを進めるのは人です。
特に借地権物件では、売主様と買主様だけでなく、地主が加わるため、その事情によっては取引が大きく左右されることがあります。
今回の経験で強く感じたのは、「正論だけでは取引はまとまらない」ということでした。
契約書を読み、法律や実務を理解することはもちろん重要です。
そのうえで、そこに関わる人が何を考え、何を嫌がり、どこまでなら受け入れられるのか。テキストを読んでいるだけでは分からない、現場だからこそ得られた経験でした。
これは借地権に限った話ではありません。所有権の取引であっても、人と人が関わる以上、それぞれの事情や思惑によって、教科書どおりには進まないことがあります。
知識や手順を身につけるだけでなく、目の前の相手や状況に合わせて考えること。
テキストを読んでいるだけでは分からない、不動産取引のあり方を改めて考えさせられる貴重な経験となりました。


