AIでは高評価。それでも売れないマンション

区分マンションの売却を受託していると、売主様の希望価格と実際の査定価格に大きく差が出ることもあります。

「この価格はどのように考えましたか?」と聞くと、最近増えてきたのが「AIで調べたら、このくらいが妥当だった」という回答です。
今はAIでも簡単に不動産価格を調べられ、相場の目安をつけやすくなりました。

一方、実際の売却現場では「築浅・駅近・見た目もきれい。AIの評価も高い。それなのになぜか売れない」というマンションがあります。
なぜ、こうしたズレが起きるのか。今回は、AI査定と実際の売却価格がズレる要因を考えてみます。

① AIが参考にする価格は「売れた価格」とは限らない

まず注意したいのが、インターネット上に公開されている物件価格です。

SUUMOやHOME’Sなどで、同じマンションが2,500万円で掲載されていれば、「自分の部屋も2,500万円くらいで売れるのでは?」と思うのは自然です。
しかし、公開されている価格の多くは「成約価格」ではなく「募集価格」です。
2,500万円で掲載されていても、実際にその価格で売れたとは限りません。
むしろ、価格が高くて長期間売れ残っている可能性もあります。

さらに、同じマンションでも面積、階数、賃料、管理費・修繕積立金などによって評価は変わります。
AIで相場の「あたり」をつけることは便利ですが、公開情報だけでは実際の成約価格とズレることがあります。

② 金融機関が嫌がる「個別要因」がある

投資用マンションでは、「金融機関がいくらまで融資できるか」が売却価格に大きく影響します。

例えば、風俗街や歓楽街に近いマンション。
駅近・築浅で賃料もしっかり取れていても、立地特性から金融機関の評価が伸びず、場合によっては融資対象外になることがあります。
意外なところでは「バルコニーがない」という理由で取り扱いが難しくなるケースもあります。

また、2,000万~3,000万円前後の投資用区分では「誰が売主なのか」も重要です。
売主が不動産業者の場合、買主が提携ローンなどを利用できるケースがあります。
一方、個人が売主の場合、同じような融資を使えず、一定の自己資金を求められることがあります。

仮に2割必要なら、3,000万円の物件で600万円+諸費用です。購入できる個人はかなり限られます。
そのため、一般の個人にいくらで売れるかという「エンド価格」だけでなく、融資ルートを持つ買取業者がいくらで買えるのか、という視点も重要になります。

まとめ

AI査定は「答え」ではなく「参考値」

一見条件の良いマンションでも、細かく見ると価格に影響する要素はたくさんあります。
立地、バルコニーの有無、面積、賃料、管理費、修繕積立金、そして金融機関の評価。
例えば、管理費・修繕積立金が月1,000円違えば年間12,000円。利回り4%で単純に収益還元すると、約30万円の価格差になります。
AIは非常に便利ですが、出てきた数字をそのまま「正解」と考えてしまうのは少し危険です。

特に不動産業界には、実際の成約価格、金融機関ごとの融資基準、買取業者の得意・不得意、価格交渉など、インターネット上には出てこない情報がまだまだあります。
査定はあくまで「机上」実際の取引は生もので、タイミングにも大きく左右されます。
金利や融資環境、賃料相場が変われば、「去年この価格で売れた」が今年も通用するとは限りません。
AIで相場観をつかみ、そのうえで実際の成約事例、融資環境、買主の動きを確認する
今回、売主様の希望価格と実際の査定価格の乖離から、不動産価格だけでなく、AIとの付き合い方についても改めて考えさせられました。