購入したマンションの専有部分に欠陥があった場合、購入した方が売り主に対して損害賠償請求ができます。
一方、廊下や外壁などの共用部分については、管理組合等の管理者が全区分所有者に代わって分譲時のデベロッパーに対し損害賠償請求を行うことができます。
しかし、状況によっては共用部の欠陥について管理者が損害賠償請求をできない場合があります。
この問題点について紹介していきます。
実際にあった事例でタイルが剥離して落下したケースを見ていきます。
転売もされていた区分マンションのケースで分譲から数年後に外壁のタイルが剥離して落下し、それがマンションの施工不良の問題だと発覚した場合、分譲時の売主(デベロッパー)に対して区分所有者全員を代理して管理者から補修工事を請求することになります。
しかし、売主が補修工事を拒否した場合、管理組合は損害賠償請求をするでしょう。
ここでも売主側がまだ任意で支払わなければ訴訟問題となり、実際にこのケースでは裁判にまでなりました。
裁判にまで発展したこの事例ですが、結果は区分所有法などの規定により管理者は原告適格がなく訴訟をすることができないと訴訟却下という結果でした。
なぜこのような結果になってしまったのか、それは「原告適格がない」・「転売されていた」という点がポイントとなります。
裁判所の結論は、管理者が訴訟を起こすには区分所有者全員が損害賠償請求権をもっている場合に限るというもので、転売された中古オーナーが損害賠償請求権を譲渡されていなかったためこの要件を満たせないからという理由でした。
区分所有法の解釈として、損害賠償請求権は「分譲主(デベロッパー)と最初に取引した購入者のもの」とされその購入者からさらに中古を購入した方には債権譲渡契約などで権利を譲渡しない限りこの権利を持ちません。
こうなると管理者は区分所有者「全員」を代理できていないため訴えを却下したということです。
こうなってしまった場合どうしたらよいのでしょうか?
全額を請求する方法としては、中古での購入者が当初の所有者に連絡を取り債権譲渡契約を結ぶというやり方があります。
しかし、簡単に連絡つくか・応じてくれるかは不明ですし手間も時間もかかります。
また、管理者を通さずに損害賠償請求権を持っている区分所有者自らが請求するということもできます。
この場合は持ち分に応じた分しか請求できない為、例えば当初の購入者(損害賠償請求権利者)が全体の半分だった場合、損害賠償請求が通ったとしても補修費用は半分しか手に入りません。あとの半分は自腹で負担ということになりますので区分所有者間でもめることが予想されます。
こういった判例もあり、現行法ではこのケースだと管理者が区分所有者に変わって全額を請求することができないのが実情です。
このような問題に対処するため、区分所有法の改正が議論され改正案も国会に提出される予定です。しかし、改正が実現し施工されるまでこの問題は残ります。
このほかにも、不動産業界にはまだまだ法の抜け道があり改正を繰り返されています。
またこのケースは、品確法で売主が業者の場合10年は契約不適合責任があるための適用です。それ以上の築年数の物件には適用されません。
施工不良などは大規模修繕時に見つかることがほとんどでそれ以前に施工不良を見分けるのは非常に難しいです。そういう意味では築浅物件よりも一度大規模修繕が終わったあたりの物件を選ぶのも良いかもしれません。