売却での注意点② 保険・保証の重要性

あるお客様より、新築一棟収益マンションの売却をご依頼いただきました。こちらは近年増加傾向にある、RC壁式構造の物件で、売主様が土地を購入し、ご自身で施工会社と請負契約を結んで建築されたものです。ただし、このような形式の物件には特有のリスクがあり、今回はまさに「施工会社の倒産」という業界でも頻発しているトラブルが発生していました。今後の対応を進める上で、この物件が抱える問題点を整理し、スムーズな売却につなげていく必要があります。

問題①:施工会社の施工保証が受けられるか否か?

まず一つ目のポイントですが、「施工保証が買主様に引き継がれるかどうか」は、売却時の大きな判断材料となります。通常、施工会社との請負契約により、構造部分は10年、外部や設備は1〜2年のアフター保証が施主様に対して付与されます。ただし、多くの場合この保証は売却先には引き継がれない契約になっていることが多いのです。とはいえ、これは請負契約時に一言交渉すれば、引き継げるように契約内容を調整することも可能です。特にRC壁式構造は、断熱や外装の仕様により雨漏りリスクも高く、保証の必要性が高まります。火災保険ではカバーできない部分もあるため、施工保証が利用できるかどうかは、買主様の安心感や物件の売りやすさに直結する重要な要素です。

問題②:瑕疵担保保険の保険が利用できるか?

次に重要となるのが、「瑕疵担保保険が利用できるかどうか」です。この保険に加入していれば、万が一施工会社が倒産した場合でも、一定のアフター対応が保険によりカバーされます。とても心強い制度ですが、転売時にも保険が継続できるかどうかは、加入時に「転売特約」を付けているか否かで大きく変わってきます。また、この手続きは基本的に施工会社からの申請が必要なため、協力的でない施工会社だと手続きが進まないという実例もありました。万が一、倒産後に名義変更されていなくても、施主が窓口となることで買主様のために保険対応ができる場合もあります。こうした対応は売買契約時に特約として明記することで補うことが可能です。いずれにしても、これらは売却時に判明することが多いですが、本来は請負契約時から意識しておくべき重要なポイントです。先を見据えた準備が、トラブル回避とスムーズな売却につながります。

まとめ

今回ご依頼いただいた新築一棟収益マンションは、近年増加しているRC壁式構造の物件で、売主様が土地取得から建築まで行ったものです。しかし、施工会社が倒産するというリスクに直面し、売却にあたっては「施工保証」や「瑕疵担保保険」の扱いが重要なポイントとなりました。これらの保証は、原則として買主様には引き継がれない契約が多いため、請負契約時に「転売特約」などを含めた事前調整が不可欠です。こうした準備が、将来的な売却時の安心材料となり、スムーズな取引を実現する鍵となります。