住宅ローンの低金利は、日銀がゼロ金利政策を導入した2009年以降に始まり、2016年にはマイナス金利も導入され、長期間継続してきました。
2025年には利上げが実施されたものの、依然として住宅ローン金利は1%を下回っており、投資ローンの2%台と比較しても大幅に低い水準です。
借入額によっては数百万円単位で返済総額が変わるため、この金利差を利用し、本来は投資ローンで借りるべき投資用マンションを住宅ローンで取得する手法が横行しました。
住宅ローンは本人または親族が居住する住宅を対象としており、原則として投資用には利用できません。
しかし、「一度は自ら居住し、その後やむを得ない事情(転勤など)で賃貸に出す」という形をとれば容認される場合もあり、この“グレーゾーン”を販売手法として用いる不動産業者も少なくありませんでした。

こうした不正利用を受け、住宅金融支援機構を中心に金融機関が監視を強化しています。
特にフラット35では審査が厳格化され、投資目的と疑われる場合には融資が下りにくくなりました。
単身者向けの小規模マンションなどは投資利用の可能性が高いとみなされやすく、面積要件を満たしていても審査を通過しにくい傾向が見られます。
さらに近年では、既に住宅ローンで投資物件を保有しているケースについても調査が進み、不正が発覚すれば「一括返済」を求められる事例が増加しています。
一括返済に応じられない場合には競売にかけられますが、競売価格は市場価格を下回るのが一般的です。
結果として残債が消えず、借主に返済義務が残るリスクが高まります。

不正融資状態のまま物件を保有し続けることは非常に危険です。
一括返済を求められる前に、以下の対応を検討すべきです。
1. 投資ローンへの借り換え
正規の融資形態に変更する方法ですが、金利上昇により返済額が増加します。
また、残債全額の借り換えが認められるとは限らず、自己資金を用意する必要がある場合もあります。
2. 物件の売却
残債がある程度減っている場合には売却が有効です。
利益がほとんど出ないケースもありますが、逆ザヤで毎月赤字を垂れ流している場合は、早期売却により心理的・金銭的負担を軽減できます。
売却すれば利息支払いを大幅に削減できる効果もあります。
返済シミュレーション例
仮に2,000万円を35年、金利0.875%で借り入れた場合、総返済額は約2,322万円、毎月の返済額は55,299円です。
• 5年後に売却する場合
残債:約1,750万円
継続返済との差額:約240万円の利息軽減効果
• 10年後に売却する場合
残債:約1,489万円
継続返済との差額:約170万円の利息軽減効果
このように、早期に手放すほど利息軽減の効果が大きくなります。

これまで「グレーゾーン」とされてきた手法も、近年は審査強化により実行が難しくなっています。
そもそも投資目的で住宅ローンを利用することは契約違反であり、大きなリスクを伴います。
住宅ローンを検討する際に「賃貸に出した場合の家賃相場」を確認すること自体は有益ですが、それはあくまでライフプランの参考に留めるべきです。
住宅ローンは本来「自己居住用資金」であり、投資との混同は避けなければなりません。
低金利は確かに魅力的ですが、住宅ローンで購入すべき物件は収益性ではなく、居住の満足度や将来の資産価値を基準に選ぶことが賢明です。
投資と居住を明確に分け、健全な資産形成を行うことが求められます。


