「南向き神話」はまだ通用する? 今と昔の住まい事情

物件を選ぶ際、立地や間取りと並んで重視されるのが部屋の向きです。中でも「南向き」の部屋は日当たりが良いというイメージもあり人気が高く、賃貸でも売買でもその条件を1番に挙げる方もいます。

日本では多くの方が南向きを良しとし好んできましたが、以前とはライフスタイルも変わり、必ずしも南向きの部屋でないといけない理由が薄れてきているようにも感じます。

今回は南向きの部屋が良しとされてきた文化的背景や、投資として考えたときの影響度も考えていきます。

南向き物件の特徴をより知ることで、入居者の方に対して、南向きの物件であればより良いアピールを、それ以外の方角であれば代替策や付加価値をつけることで別の角度からアプローチすることを考えられ、賃貸募集までイメージして投資物件の候補を選ぶことができるかと思います。

1:南向きが好かれる理由

まず、南向きの部屋の最大の魅力は日中通して明るい日差しが入り、洗濯物も乾きやすい点にあります。

日本含む北半球では太陽は東から正午に南の高い空に上がって西に沈むため朝から夕方まで安定して自然光が入ってきます。そのため冬場でもしっかり部屋が暖められて、照明に頼らずに自然光で暮らせます。

日照時間も長いので、梅雨時でも日差しの恩恵を受けやすく部屋干しの頻度を減らしてカビを予防することもできます。

そういった理由もあり、他の方角の部屋に比べ賃貸・売買共に価格が高めに設定されることも多いです。

2:文化的背景 日本の風土・文化的特徴

日本は北半球の温帯に位置し、四季の変化がはっきりしていて冬は寒さが厳しく、夏は降水量が高く湿度も上がります。

また、農耕民族である日本人にとって日照は作物の生育にとっても必要不可欠であり、明るく暖かい場所は生活の中心に位置づけられてきました。

住居の思想についても中国から風水の考え方が取り入れられております。
風水では南は「陽」の向きとし、活気・繁栄・栄誉・豊かさなどと結び付けられて考えられていて、南向きに門や玄関、居間を配置することで運気が上がると信じられてきました。
そのため、京の都や武家屋敷など伝統的な住宅ではこれらが反映され、南側に縁側や庭を設けて、そこに面し居間や座敷を配置するのが一般的でした。

こうした設計をすることにより、冬は暖かく、夏は庇やすだれで温度を調整し、涼しい南風も通りやすくなります。

季節の変化と調和した設計や日光に当たる=清潔に保てるといった思想が、南向きの部屋は快適で理に適っているという価値観になっていき、今でも不動産広告では南向きの部屋が特別扱いされています。

3:現状どうなのか? ライフスタイルの変化と物件の価格差

現代においての実情はどうでしょうか?
日当たりや洗濯物の乾きやすさなど、実生活上の快適さでは以前人気が高く子育て世帯、単身世帯問わず選択肢としては有利です。

しかし、共働きで昼間は家に人がいないなど生活スタイルの変化や、断熱性や照明技術の向上により十分快適に暮らせるようになってきました。

それ以上に、駅近・治安などの立地をより重視する方が多く、南向きはそれらを補完する要素に過ぎないケースも増えてきています。

物件の価格差を前提に考えても、南向きと他の向きの差額はどちらも南向きの方が高くなるが、賃貸よりも売買の方がより大きく価格の差が開く傾向にあります。

投資物件として利回りを考えるなら、他の向きの方が高くなるケースもあるので、賃貸付けの問題をクリアできるのであればあえて南向きにこだわりすぎなくても良いでしょう。
実需の区分マンションだとしても、平日仕事でいないのであれば、東向きなどでも午前中は日光が入りますのでそういった物件も視野に入れて探すと価格も比較的抑えられます。

4:まとめ ホントのニーズ、恩恵を受けるのは誰か?

南向きは依然として人気があるので、需要と供給のバランスから当然に価格差がついてきます。賃貸・売買市場共に相場は上昇傾向なので、この価格差も決して小さいものではなくなってきています。

南向きの部屋を考える際には、日中の日当たりの恩恵を誰が一番受けるのかという視点も重要です。

気温も上昇傾向なので、直射日光は家具の日焼けだけでなくむしろ暑すぎるぐらいになる可能性もあります。

売却・賃貸にだすと考えた時、中華系の方など風水を第一優先に考える方もいますので、どこをターゲットにするかもでも変わってきますが、他の要素で戦えるならこだわりすぎなくても良いかと思います。