昨今投資家の皆様は、価格上昇マーケットの中、短期売買となるケースが増えてきたため、業者免許を取得し、銀行ファイナンスの上で短期での売却をみとめてくれるプロジェクト融資(1~3年)を組むことが増えています。
業法上の免許を取得することで、堂々と「事業としての反復継続した不動産取引(短期売買など)」を行うことが可能になる一方、留意すべき重大なポイントがあります。
それは、宅建業者として自ら売主となる場合、買主(一般消費者)を保護するための厳格なルールである「自ら売主制限(8種制限)」が適用されるということです。
プロとして適切な取引を行うために、まずはこの8つの制限の全体像を把握しておく必要があります。
1.自己の所有に属しない宅地又は建物の売買契約締結の制限
2.クーリングオフの適用(契約行為の場所)
3.瑕疵担保責任の特約の制限(民法の原則よりも買主に不利な特約は無効とする※ただし、引渡しから2年以上となる特約を除く)
4.手付額の制限(売買代金の10分の2を超えてはならない)
5.手付金等の保全措置
6.損害賠償額の予定等の制限(売買代金の10分の2を超えてはならない)
7.割賦販売契約の解除等の制限
8.所有権留保等の禁止
上記8つの制限の中でも、実務において特に抵触しやすく、かつ取引の根幹に関わるのが
「 瑕疵担保責任(契約不適合責任)」「手付金の額」「手付金等の保全措置」「損害賠償額の予定」の4つです。
① 瑕疵担保責任(契約不適合責任)の特約制限
基本的には2年責任を追う必要が出てきます。瑕疵担保責任免責での取引はできません。
一般個人の売買でよく見られる「瑕疵担保免責(現状有姿・ノークレームノーリターン)」での取引は、宅建業者には認められていない点に強い注意が必要です。
② 手付金の額の制限
1000万円以下である必要性があります。
完成物件は売買金額の10%まで、未完成物件は5%までとなり、これを超える部分は保全措置が必要となります。
③ 手付金等の保全措置
保全措置については、事前登録やコストが必要となるため、年に数件程度の必要性であれば、残念ながら採算が合わない印象です。
(別途一覧表比較あり)ですので、必然的に、保全措置の必要のない金額でのお預かりになる取引となります。
④ 違約金(損害賠償額の予定)の設定について
業者売主となることで、期日による違約金の設定ができなくなります。
ただし、履行による違約の設定は可能ですので、どのような要件が履行にあたるのか、今一度整理を行うことが大切です。
これらも、個々の案件ごとの細やかな確認とそれに応じた特約の設定が必要となってきます。
取引に精通した知識と経験が必要となります。
このように、宅建免許を取得して自ら売主となることは、ビジネスチャンスを広げる一方で、一般の売買とは全く異なる次元の法的責任と制約を伴います。
「知らなかった」では済まされない厳格なルールの中で、個々の案件の特性(完成・未完成、買主の属性など)に応じた細やかな確認と、適法かつ安全な特約の設定が求められます。
事業を成功に導くためには、単なる相場観だけでなく、不動産取引に関する法律に精通した深い知識と、実務での豊富な経験が不可欠と言えるでしょう。


