運用して判明した電子契約の利便性と課題

当社では、2026年の繁忙期を迎えるにあたり、賃貸借契約において「電子契約」への切替を実施しました。

個人・中小企業=電子契約、大手法人・社宅代行会社介在=紙での締結として、事前に告知を行い借主承諾を得た契約を電子署名にて作成するフローで、繁忙期契約のうち8割近くを電子署名に置き換える事が出来ました。

社が導入前に抱えていた課題と電子契約での解決、および電子契約での課題を以下にまとめてみました。

皆様も、電子契約による課題解決については、イメージを共有できるかと思います。
但し、電子契約が全てを解決するわけでは無く、電子契約自体の課題も感じる事が出来ました。
今回は、皆様にも追体験頂けるようなご案内が出来ればと思います。 

1. 最大のメリット:後工程の劇的な効率化と人員の再配置

電子契約の導入前は、「契約書の作成や郵送といった前工程が楽になる」というイメージが先行していましたが、実際に運用して最も効果を実感したのは、「押印確認」「保管」といった後工程でした。

【第1位:契約書類のスキャン業務の削減】
従来、紙の契約書のスキャン業務は、派遣スタッフやアルバイトの皆様にとって大きな負担(主戦場)となっていました。

担当者ごとにスキャン方法やチェックの手間が異なる
・スキャン中は複合機が占拠され、割り込みによるファイル結合の手間が発生する
・スキャン後のファイル名変更や保管場所への格納作業が煩雑

電子契約を導入したことで、これらのスキャン作業量が8割も削減されました。
(なお、紙での契約となる社宅代行会社案件は押印に時間がかかるため、繁忙期明けの作業に回すことで業務の平準化を図れています。)

派遣スタッフやアルバイトを前工程(部屋の紹介や内見業務)に充てる事ができ、前年以上の成約につなげる事が出来ました。

2. 電子契約特有の課題:運用して見えた「万能ではない」現実

一方で、電子契約は決して万能ではなく、運用を通じて新たな課題も浮き彫りになりました。
当社が導入している電子署名(ハトサポサイン)については、担当者が設定した後は、どのように設定したか確認する方法がありません。
その為、担当者が慣れるまでの間、以下のような指摘を頂戴しました。

① 電子署名作成工数の増加と人的ミス
電子化により製本の手間は消えましたが、「署名箇所」や「押印箇所」のシステム上の設定は担当者が手作業で行う必要があります。
設定後に内容を確認する機能がないため、「日付が空白」「仲介業者が借主の署名欄に設定されている」「添付資料の不足」といったミスが発生しやすく、担当者の習熟度向上が急務となっています。

② 差し戻し・修正の難しさ
こちらは、当社が導入している電子署名(ハトサポサイン)は設定漏れや間違いが発覚した場合、システム上に「差し戻し機能」がないため、「一度破棄して再設定・再配信する」か「別途、覚書を電子署名で結ぶ」という対応が必要になります。
紙の契約書であれば「訂正印」で済んだものが、電子署名では解決しずらくなった印象です。

③ ダウンロード期日の制限
当社が導入している電子署名(ハトサポサイン)では、すべての署名が完了すると各者にデータが配信されますが、ダウンロードには「完了後2週間以内」という期限があります。
期限超過後は当社側のシステムでしか取得できないため、繁忙期明けに仲介会社様から出力依頼が相次ぐ事態となりました。

④ 複数システムによる借主の混乱
「保証委託契約書」や「火災保険申込書」などは、それぞれの提供会社の電子署名システムを利用するため、借主様には複数の電子署名依頼が届くことになり、混乱を招く要因となりました。

3. 仲介会社から見た課題:多様化するシステムと進捗管理の壁

今回の導入では、現場で直接お客様とやり取りをする「仲介業者」の皆様の視点でも、以下のような特有の課題があることが分かりました。

各社の電子署名システムへの対応(不慣れ)
管理会社ごとに採用している電子署名システムが異なるため、仲介業者はシステムごとの「できること・できないこと」を把握し、経験値を積む必要があります。
長期的には、各社の電子署名を一元管理できるようなプラットフォームが求められるでしょう。

全体の進捗確認のブラックボックス化
電子署名の場合、仲介業者が自身の署名を終えた後、「入居者」や「貸主」の署名状況を把握しづらいという問題があります。

・借主が重説前に署名してしまった。全て押印が完了したか知りたい
・法人契約で入居者へ重要事項説明を実施した。借主(法人側)で署名を実施したか不明
といった問い合わせを受けます。

鍵の郵送=入金と電子署名が必要な為、全体の進捗把握が難しいとの課題を感じました。

4. 総括と今後の展望:AI活用による次なる業務改善へ

2026年の繁忙期は、まさに賃貸管理のあり方が「紙からデジタルへ」と逆転した節目の時期となりました。

実際に電子契約を本格運用したことで見えてきたのは、導入前から見えていた「書類の作成から郵送、押印、返送待ちといった「物理的な移動」の解決」だけではなく、「書類が無いことによる人員再配置」でした。

書類管理に忙殺されていた時間を高付加価値の業務に充てる事ができたことこそ、今繁忙期の最大の収穫です。

電子署名の課題である「入力工数、入力ミスに対する取り組み」として、AIを活用し、単純作業からの解放を目指して、引き続き業務に取り組んでいきたいと思います。