売却での注意点① 見落としがちな管理リスク

ある所有者様から、新築一棟収益物件の売却依頼を受けました。売主様は課税事業者になる前に売却を完了したいというご要望があり、決済までのリミットは3か月。この期限を過ぎると消費税の扱いで約2,000万円もの差が生じるため、確実かつスピーディな売却が必要でした。

物件は依頼前に他社へも1か月ほど声がかかっていたものの成約には至らず、ちょうど完成のタイミングでオーナー様が価格を下げ、非常にバランスの良い条件となったため、すぐに動き出しました。弊社でも買取を検討しましたが、弊社では自社でのリーシングを希望しており、空室での購入を前提としていたため、まずは仲介で対応することに。

結果、販売開始からわずか1週間で3件の買付申込が入り、非常に反響のある人気物件となりました。しかし、その後、資料を精査していく中で、管理面に複数の問題が発覚し、売却活動に大きな影響が出ることとなります。

問題①:管理契約の内容

本物件では、管理料3%という一見魅力的な条件でしたが、契約内容を確認すると大きな問題が判明しました。具体的には、リーシング成約時に賃料3か月分の業務委託料が発生し、さらに解約時には6か月前通知に加え賃料1〜2か月分の違約金が必要となる内容でした。例えば今回のケースでは管理契約を外すのに約200万円の負担となります。物件完成後すぐの売却を見込んでいたにもかかわらず、売主様が契約内容を十分に把握しないまま締結してしまったため思わぬ出費が発生してしまうという、大きな誤算となりました。

問題②:テナントの属性

本物件の賃貸借契約書一式を精査したところ、入居者のうち2部屋が風俗業に従事されている方であることが判明しました。これは、サブリース主体の管理会社が運営しており、オーナーの入居審査を介さずに契約が進められていたことが原因です。この管理会社は業界でも審査が甘いことで知られ、募集図面には「水風外OK(水商売・風俗・外国人可)」と明記されていました。今回の売却では確実性を重視し、大手企業を中心にアプローチしていたため、入居者様の属性が問題となり1番手の買付はキャンセルとなってしまいました。

問題③:保証会社と管理切替のリスク

今回の管理会社は自社独自の保証プランを採用しており他社への管理切替が困難な仕組みになっていました。管理会社を変更すると保証契約が引き継がれず、新たな保証会社での再審査が必要になります。これにより保証委託料が再度発生するだけでなく、審査に通らなければ保証なしの契約リスクも発生します。特に風俗系テナントは審査が厳しく、保証がつかない可能性も否定できません。この状況により、管理切替や自社管理を希望していた買主からの買付も立て続けに流れ、結果的に魅力的だった物件の価値が大きく損なわれる結果となりました。

まとめ

このようなトラブルを未然に防ぎ、スムーズかつ効果的な売却活動を行うために、弊社では売却開始時に物件資料一式のご提供をお願いしています。これは、売主様のご意向に沿った売却を実現するための大切なプロセスであり、無駄な動きを避けるためにも不可欠です。特に高値での売却を目指す場合、物件特性を正確に把握し、魅力を的確にアピールできる資料作成と買主への適切なアプローチが重要となります。ご検討者様との信頼構築のためにも、迅速な書類のご提供にご協力ください。なお、紙資料を頂ければ弊社にてデータ化も可能です。売却活動には丁寧な準備が必要なため、基本的に専任媒介でのお取引とさせていただいております。