用途変更物件購入に際しての留意点

用途変更物件の調査で判明したリスク事例
先日、投資用売却物件の資料を確認したところ、ホテルから共同住宅へ用途変更された事例に遭遇しました。

用途変更とは、建物の本来の用途(住宅、店舗、工場など)を、別の用途(事務所、保育所、飲食店など)へ転用する際に必要となる法的手続きです。

新築時とは異なり、避難設備や消防設備といった安全基準が用途ごとに異なるため、建築基準法に基づいた確認申請や工事が必要になる場合があります。
特に、変更する部分の床面積が200㎡を超える場合や、不特定多数が利用する特殊建築物に変更する場合は、建築確認申請が必須です。

1. 調査経緯と仲介会社の説明

利回りの高い物件であったため詳細調査を進めたところ、登記簿上も「ホテル」から「共同住宅」へと種類変更されていることを確認しました。

しかし、検査済証の提出を依頼したところ、仲介会社から
検査済証は新築時(ホテル)のものしかなく、現所有者は購入時に『建築確認不要』と案内を受けている。登記簿上も共同住宅へ変更済みである。」
といった回答がありました。

当該建物は200㎡を超えるため、用途変更時に建築確認が必要ではないかと疑念を持ち、改めて法令を調査しました。

2. 法令上の整理

建築基準法では以下のように規定されています。

特殊建築物の用途変更で、変更後の床面積が200㎡を超える場合建築確認が必要
200㎡以下、または特殊建築物に該当しない場合 確認不要
類似用途への変更(例:劇場から映画館)確認不要

ただし、確認申請が不要な場合であっても、建築基準法や消防法の規制適合義務は依然として課せられます。

3. 今回の物件の問題点

一見すると「ホテルから共同住宅」は類似用途に見えますが、実際には両者の基準は大きく異なります。

• ホテルは避難・換気・排煙・積載荷重などの基準が厳格
• 共同住宅は基準が一部緩和される一方、防火区画や採光(床面積の7分の1以上)確保など別の要件が発生

このため、建築確認が必要となるケースが多いことがわかりました。
実際、インターネット上の情報でも「建築確認が必要」と明記しているものが大半ですが、一部で「不要」と誤解を招く記載があり、今回の仲介会社の説明もその影響を受けていた可能性があります。

では、登記簿上は「共同住宅」へ変更されていたのか。

調査の過程で建築士に確認したところ、登記官は現況を重視する場合があり、共同住宅として使用実態があれば用途変更の登記が行われることもあるとの説明を受けました。
つまり、建築基準法上は未確認であっても、登記上は「用途変更済み」とされるケースが存在するということです。

4. まとめ

今回の物件は用途変更がされているものの、建築基準法を満たしていない違法建築物である可能性が高いと考えられます。
違法ではない可能性もありますが、その証明には改めて建築確認を取得する必要があり、既存建物での確認には相応の時間とコストが発生します。
仮に違法建築物であった場合でも、融資に応じる金融機関は一部存在しますが、借入条件(金利・期間・融資額)は不利になり、結果として売却価格を下げざるを得ないケースも想定されます。

用途変更物件の購入に際しては、登記簿上の記載だけではリスク判断が不十分です。

• 建築確認の有無
• 検査済証の提示
• 消防法・建築基準法への適合状況

これらを必ず確認することが不可欠です。市場には「登記上は用途変更済みだが、建築確認がなされていない物件」が存在するため、調査の徹底が投資判断に直結します。